『「上手くいかない」のも仕事のうち』−森博嗣著「やりがいのある仕事」という幻想

 ひょんなことから始めた弊社の職業訓練も、もう3年目。最初はただ教えることに精一杯でしたが、制度が基金訓練から求職者支援制度に代わり、講義内容も職業支援の在り方も、制度的にも、内容的にも深化してきています。明日からまた新しいコースの募集も始まります。

 おかげさまで、キャリアカウンセリングにも取り組み、さらにその効果を上げるためにはどうしたらよいのかなんてことも考えるようになってきました。その関連の本にも、目が行きます。(とても読み切れてはいないですが。)勉強の範囲というのはきりがないものですね。

 そんな中、今日ご紹介するのは、ちょっと肩の力を抜いて「働く」とか「職に就く」なんてことを考えるのにいい本ではないかと思います。
 
 森博嗣「やりがいのある仕事」という幻想 (朝日新書)。帯には「労働1日1時間の僕が考えていること」とか、「働くことってそんなに大事とか?」ちょっと刺激的な文字が並んでいます。


 
 仕事に悩んだ時、うまくいかないなぁと思うとき。会社やめたいなぁとか、やりがいがないなぁと思った時。仕事は人生の中の一部分、お金を稼ぐための手段。と冷静になれば、少なくても絶望の淵からは救われるのかもしれないですね。というのが私の読後感です。

 森さんは今は作家として、1日1時間だけ執筆をされているとこの本には書いてあります。若いころは寸暇を惜しんで研究をされていて、出世したら研究の時間が減っていって、小説を書くようになったら成功して、大学の世界を抜け、今では、模型製作が一番の大切なことである。こう書くと、なんだか自分には遠いなぁと思ってしまいますが、人生の楽しみ方は、森さんのこの本にも書いてある通り、ひとそれぞれ。そういう考えに触れられるのも本の魅力です。

 

「今の仕事がどうしても嫌で、とにかく死にたいくらい落ち込んでいる」という人は、その仕事を辞めればよい、と僕は思う。実際にそういう相談を受けたら、「辞めたら」と答えるだろう。仕事は辞めても取り返しはつく。<中略>
 「希望する仕事に就けない」と悩んでいる人は、とりあえず、できる仕事をすれば良いと思う。バイトでも良い。どんな仕事でも、恥ずかしいことはない。<中略>
 「良い就職ができないから、良い結婚もできない。だから、良い人生が送れない」と考える人は、「悪い就職をして、悪い結婚をして、悪い人生を送ってみてはどうか」とすすめたい。僕は、そういうものはないと考えているからだ。悪い人生って、なんだろう?(pp211-212)

 まず動いて見て、やってみると意外に楽しい世界があったりするものですしね。ま、仕事は楽しくなくてもやらないとならないこともありますけど。肩の力を抜いて、取り組んでみましょうか。大切なものは、意外なところで見つかるもののようですしね。