「神さまよりも人間のほうが、ずっと優しい。」

やばいのは、わかっていました。

銀行の手続きで30分ほど時間がかかるといわれ、かばんに入っていた2冊の本のうち、「短編のほうがいいか。」と思って取りだしたのが、重松清さんその日のまえに (文春文庫)。確か映画にもなったと記憶しています。

この本を久々に読みたいと思った直接のきっかけはブログ「わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」「がんを考える、自分事として、「カシオペアの丘で」」という記事を見つけたからでした。「カシオペアの丘で」も実は読んでいるのですが、私はより「その日のまえに」の印象が深く、そしてほんとまずいことに思わず感きわまるシーンが多かったと記憶していたので、ご紹介しようかなと思い、久々手に取って見たのですが・・・。

この短編の後半のストーリーの中心はがんになった奥さんとそのだんなさん、子供や親、そのほかの取り巻く人々の話なのですが、本当にちょっとした気持ちの揺れ、後悔、言葉にするやさしさと言葉に出さない優しさ、そんなことを表現している一つひとつのフレーズに心が揺さぶられます。

今回も短編のうち「その日のまえに」とその次の「その日」(タイトルはこの章から)と10分ほど読み進めてみたらやっぱりもう駄目でした。あわてて本を閉じ、目を伏せて瞑想しているふりをして、なんとかこぼれ落ちそうになるものをこらえて窓口から自分の名前を呼ばれるのを待ちました。

それにしても重松さんってどうしてこんなに優しい言葉を紡げるのでしょうか。
重松さんの本を読むときは、ふと、想いがこぼれないように、気持ちのガードを固めるか、または自分の部屋で読むかしないとやはりまずいですね。