「人は悲しみから立ち上がる力がある」

彼岸の入りです。

関東は薄曇りの一日。お墓参りにはちょうどよい気候かもしれません。

数日、飛んでしまったお葬式を考える新書の話。今日はその3冊目のご紹介をさせてください。


橋爪謙一郎著お父さん、「葬式はいらない」って言わないで (小学館101新書)。いままで読んできた3冊の中で一番すっと、自分の中に入り込んできた本です。

著者の橋爪さんは、アメリカの大学で葬儀を学び、葬儀社で2年間のインターシップを経て、エンバーマーライセンスを取得。人が亡くなる時の喪失感、悲しみから、自分を押さえこみ、自分の心にふたをしてしまう「グリーフ(悲嘆)」に長く向き合ってきた方です。

2001年に帰国して、多くの遺族の方に接していると、悲しみを抱えた人たちが置き去りにされているように思えた。しかも年ごとに、その人たちが行き場を失いつつあると感じる。「故人とどうお別れするか」が今こそ大切になっているという思いは増すばかりである。(p21)

病気を抱えながら70歳まで生き、ある意味、心構えはできていたはずの私の父の葬儀でさえ、私は戸惑いをかくせませんでしたので、もし、突然身内の不幸がやってきたとき、そのご親族の気持ちはいかばかりかと思います。

そうした時、言葉に出なくても、その気持ちを共有することの大切さを、著者は触れています。また、葬儀は残されたものにとっても大切な時なので、ただ「葬式は出さないで」だけでなくせめてお別れの会くらいは開けるようにしてあげて欲しい。とか、自分らしい葬式を出してもらうための準備であるとか、残された人のためのケアの大切さとか。

どうしても葬儀の問題は、戒名とかお墓とか葬儀社の話に行きがちですが、そういった仕組みの問題だけでなく、身近な人を失った時の痛み、悼みをどうお葬式などの場を通じて、完全に解決できないまでも少しでも緩和し、日常の生活にうまく戻れるようにするのか。こういったことを考える際に、ぜひお読みいただきたい本です。

なかなか、お葬式というものはやってこないものですが、彼岸の時期に考えてみるのもよい機会かもしれませんので・・・。

※タイトルはエピローグp198より取らせていただきました。