「プレッシャーは克服してはいけない」

 正月休みもいよいよおしまいですね。先ほど、日テレの「もうひとつの箱根駅伝」を見ていましたが、2日間のレースにかけるそれぞれの思いが凝縮した1時間番組でした。日テレの箱根取材は、夏合宿、主要な記録会、出雲や伊勢に走れなかった選手を合宿所まで追う等、ほかのスポーツでは考えられないほどの取材体制を取って、それを中継にぶつけているというのがこういう番組を見ていると良くわかります。視聴率の高さは、この取材の充実度にも支えられていますよね。

 さて、ウィンタースポーツだけでなく、受験等でもここから勝負の1月です。受験生の方、受験生を持つ親御さんにとっても緊張感が増す月ですね。


 前回のブログでプレッシャーに弱い人がどうやって仕事を進めていけばよいのか。というテーマを取り上げてみたら、反響が大きかったので私がかつて読んだ本の中で引き続きこのテーマを取り上げた本のご紹介をしてみます。

 昨年中日の投手コーチを務め、吉見投手の起用法をめぐり監督との対立なんていう話題もあった権藤博さんが、就任以前の2010年に書いた新書「教えない教え」 (集英社新書)


 権藤さんといえば、中日のピッチャーとして現役時代連投に次ぐ連投で、新人だった昭和36年に35勝、翌年も30勝を上げるなど2年間で130試合!に登板。その登板ぶりは「権藤、権藤、雨、権藤」と流行語になったほどでした。しかし、3年目10勝、4年目6勝、その後は勝てずに現役を引退しています。

野球解説を数年された後、中日・近鉄ダイエーでコーチを。そして、横浜ベイスターズでは監督もされて、チームを日本一に導いています。(リリーフエース・大魔神こと佐々木主浩投手がいた時代です。)

 「教えない教え」 (集英社新書)は、それらの経験を活かして選手の個性を伸ばす権藤さんの「コーチング手法」について、大変わかりやすく書いています。コーチとしてどう監督に向きあうかの話も載っていますので、特に27ページあたりの話を読んで見ると去年ドラゴンズのベンチの裏でどんなやりとりがあったのか、想像できるのではないでしょうか。

 さて、本題、プレッシャーのかかる場面でどうすればよいのかという話に戻りましょう。

 pp77−79の「プレッシャーは克服してはいけない」で権藤さんはこう書いています。

緊張やプレッシャーを克服するにはまず、「人はなぜ緊張するのか?」というところから考えなければならないだろう。

 勝負事における緊張は、相手からではなく、自分の中から派生しているということをまず自覚すべきだ。プレッシャーのかかる場面において、「うまくやらなくてはならない」、「成功しなければいけない」という考え方に囚われてしまうから緊張するのである。
 現代社会は「結果がすべて」という考え方に支配されてしまっている。そんな社会の風潮も人が緊張する度合いを深めているような気がする。
 「失敗は絶対に許されない」。そんな考え方に囚われてしまったら緊張するのは当たり前だ。思考も体も柔軟性を欠いた状態では、普段の実力の半分も発揮できないに決まっている。
 すぐに緊張してしまうタイプの人は、緊張を「克服しよう」と考えず、少しでも「軽減させよう」という考え方にシフトチェンジしてみてはどうだろう。
 それにはまず、プレッシャーのかかる場面から逃げてはいけない。緊張するような場面にいられることに感謝し、「こんな重要な局面に立ち会えるのだから最高じゃないか」と気持ちを切り替えるのだ。
 そうすれば、「よし、じゃあ自分がどこまでできるか試してみよう」と前向きな気持ちにもなれる。
 プレッシャーと正面から向き合い、「上手くやろう」とか「失敗は許されない」といった考え方は捨てる。失敗したっていいや。失敗したからって死にやしない」と開き直るのも、ひとつの方法と言えよう。(pp77-78)

 

 試験に限らず、何かのプレゼン・発表とか、就職の面接など、難関突破を図ろうと頑張っている人が、ぜひプレッシャーをうまく「軽減して」、普段の力を出すことができるよう、お祈りしています。