「メルトダウンしたのは福島第一原発の原子炉だけではなかった。」−船橋洋一著「カウントダウン・メルトダウン」

 今日は風の強い一日ですね。低気圧に関する情報がトップニュースで報じられていますが、その次のニュースも心配な情報です。

 「汚染水漏れ 冷温停止宣言後最大規模に」ストロンチウムが除去されていない冷却水を、地下の貯蔵施設にため込んでいたけれど、老朽化でシートが破れたことにより水漏れが起こり、大量の放射性物質が外部に放出されてしまっている。。。


 事故発生からもう2年。けれど、まだ解決されていない問題、危機はまだ続いています。

 2年が経ったことで当時は、隠れていた事実、伝えられなかったこと、情報量が多すぎて整理がされていなかったことなどが徐々に伝えられてきています。取材や書く為の時間が必要だったということもあるのだと思います。私が読んだことのある本のノンフィクションの書き手の方々も、続々とこの分野の取組を世に問うています。

 今回はそんな中から同盟漂流 通貨烈烈(学生の頃よんだなぁ)など、日本と欧米にまたがる政治・経済問題とそこに携わる人物の動きを一冊の本にまとめたジャーナリスト。この原発事故では民間調査委員会をプロデュースし、調査報告書をプロデュースした船橋洋一さんが書いたカウントダウン・メルトダウン (リンクは上巻)を。

 この本は上下あわせて900ページ強のボリュームがあり、事実の重さ、証言のきわどさ、迫真ぶりなどもあって、読後感としては重く、ずっしりとしたものが残ります。震災発生直後から、福島第一原発、オフサイトセンター、東京電力本店、地元自治体、首相官邸経済産業省文部科学省保安院原子力安全委員会原子力委員会防衛省etcにいったい何が起き、人々はどう動き、どう「動かなかったのか」が克明に記されています。

 結局、この福島第一原発では何が起きたのか。それは

 東電の経営も、原子力安全・保安院の組織も、原発の安全規制体制も、原子力を推進してきた原子力行政も、それらの知的、ビジネス的、キャリア的結合体である原子力ムラも、残余リスクを「想定外」として捨象してきた原子力の"安心・安全共同体"もみな等しくメルトダウンしていった。(P457)

 そもそも事故は起こるものとして、その備えができていたか。起きてしまったあとに、事故のダメージ減少のために適切な処置がのできたか。深刻な問題となった時、毅然とした決断ができたのか。かろうじて最後の最後のリーダーシップは発揮できたようですが、危機はまだ続いているようです。原発も、日本全体も。