「ただちに建設にかかれ」−百田尚樹著「海賊とよばれた男」

 今年のゴールデンウィーク、皆さんはどのようにお過ごしになりましたか?
 後半の4連休のスタート日、私はスカイツリータウンにできたばかりの「献血ルームfeel」に行っていました。朝から下はものすごい混雑でしたが、押上駅方面から近いイーストタウンの10階は静かで、快適でした。

 


 ツリーの上とはまた違って、眺めが近いのがまたよかったりして。東武車両基地も近いので、鉄道好きな方にはたまらないかも。


 今回も血小板20単位を依頼されたので、1時間近くの採取時間。でも、これは望むところ。採血ベットにはipodとかが置いてあって、退屈しない仕組みはあるのですが、私には貴重な読書タイム。今回持っていたのは、百田尚樹「海賊とよばれた男」(リンクは上巻に)。2013年の本屋大賞第1位受賞作品です。

 日本の石油販売大手の出光石油の創始者出光佐三氏(この本の中では国岡商店の國岡鐵造として描かれています)をモデルとしたドキュメント小説です。上下巻合わせて700ページ強の大作ですが、献血中とその行き帰りと、家に戻ってからもずっと読んで1日で一気に読了しました。

 主人公だけでなく、周りを固める人物も魅力的で、ライバル社は「國岡石油のあとには草も生えない」とその営業面、働きぶりを脅威の目で見ていたほどの働きもの。終戦後、石油が売れなくて、どうすることもできなかった時期、今後のためと、国のために会社は赤字覚悟でタンクの底から石油をくみ取る作業を受注。社員は命がけでその作業に従事しましたが、働けることのうれしさでその目は輝いていました。

 社員だけでなく、最初に創業資金を与えたオーナーとの関係、銀行家の支援、ライバル社との駆け引き、官僚制度や他社との攻防など見どころは豊富です。イランから直接石油を運び出して、輸入を世界初で成功させたエピソードはハラハラどきどき。この人々がいたからこそ、日本の石油会社には外資系だけでなく、民族資本が生き残ったということがよくわかります。


 今日のタイトルは序章から。終戦後、何も仕事のない社員は会社がつぶれることを覚悟します。そのとき国岡店主はこう叫びました。

 

「ただちに建設にかかれ」

 (中略)

「しかし−」
「その道は、死に勝る苦しみと覚悟せよ」
(p16)

 その歩んだ道をぜひお読み頂きたいと思います。