中央銀行の任務と政策手段−「連邦準備制度と金融危機」~バーナンキFRB理事会議長による大学生向け講義録

 また、こちら千葉県北西部はうっすら、雪の朝です。

 そんな、厳しい寒さの後には、暖かい春が。寒さに当たって桜の開花も去年よりは早まりそうとの予想もありますから、3月下旬が楽しみですね。

 さて、この1月はいわゆる「アベノミクス」の3本の矢のうちの一つ、金融政策をめぐり、政府と日本銀行との「攻防」が取りざたされました。金融緩和によって、投資を促進し景気を刺激する。この金融政策を取り仕切るのが日本においては、日本銀行です。日本銀行は「銀行の中の銀行」と呼ばれる、日本の中央銀行です。
 
 この中央銀行の機能って何なのか?役割とその機能は。日銀の白川総裁も本を書かれていますが、かなり本格的かつお値段も張るので、もう少しお手頃なものがないのかなと思っていたところ、アメリカの連邦準備制度理事会議長のバーナンキ氏が、2012年3月にジョージ・ワシントン大学で行った講義録が翻訳・出版されていました。その本が連邦準備制度と金融危機―バーナンキFRB理事会議長による大学生向け講義録です。


 合計4回の講義では、アメリカの中央銀行制度「連邦準備制度理事会」(FRB)がどういう経緯でできたのか。歴代の議長がどのようなスタンスで政策を実施したのか。インフレ抑制、金融危機にどのように対応していったのか。などが比較的わかりやすく記されています。翻訳が正確を期すためだとは思うのですが、やや直訳調なのが気にはなりますが、中央銀行の二つの機能、「最後の貸し手」流動性の供給と、金融政策について、丁寧に説明されています。

 バーナンキ氏は中央銀行の任務として
 

その第一はマクロ経済の安定を達成しようと務めることです。それは、一般的に経済の安定的な成長を意味します。経済が大きく振れたり、不況に陥ったりするのを避け、また、インフレーションを低位で安定的に維持することです。中央銀行のもう一つの機能は、この講義で明らかに多くの注目を集めると思いますが、金融を安定化させる機能です。中央銀行は、通常時は金融システムが機能し続けるように努めます。そして、非常時には、中央銀行は金融パニック、金融危機を防止しようと務め、その防止に成功しなかったとしても金融パニック、金融危機を和らげようと努めます。(p7)

とし、実際どのような役割を果たしたのかを述べています。

 リーマンショックの裏でFRBが何を行ってきたのか。世界の金融緩和、インフレに対する考え方はどうなっているのかを知るためには、もってこいの本だと思います。

 

 



破壊的イノベーションはあなたから始まる−イノベーションのDNA−

 まだ1月ですよね。せっかくですから年の始めだけにちょっと夢のある、大きな話の載っている本をご紹介しましょうか。

 あなたも、ゼロから世の中に全くなかった新しいアイデアをてこに大きな事業を興せる・・・かもしれない。そんな発想法を取り上げている本です。

 個人でも会社でも、元気が出てくる時って新しいことに挑戦している時、ですよね。

 でもなかなか、人と違うことってやりにくい。でも、スティーブ・ジョブス(アップル創業者)やジュフ・ベソス(アマゾン・ドットコム創設者兼CEO)だって、スタートした時は別に特別に何かの財産を持っていたわけではなく、何かの「きっかけ」を活かして、その発想を大きく伸ばして、ビジネスに落とし込み、紆余曲折を経て、ビックビジネスに成長させています。
 
 彼らの発想−破壊的イノベーション−の種は「あなたでも」産み出せるかもしれない。
「人と違う考え方を習得する方法は習得できる」(p42)。その方法論について、かなり具体的に落とし込んで書いているのが、クレイトン・クリステンセン , ジェフリー・ダイアー , ハル・グレガーセン 著, 櫻井 祐子 訳「イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル 」(Harvard Business School Press)です。

 クレイトン・クリステンセンさんといえば、イノベーションのジレンマで有名。この本に書かれている「破壊的イノベーション」を「イノベーションのDNA」では自らの手で興しましょうといっているわけです。

 破壊的イノベータの特徴である5つの発見力を身につけ、イノベーションを興す勇気を発揮せよ(p266)


 第一部では、発見力として、「関連づける力」「質問力」「観察力」「ネットワーク力」「実験力」の5つを挙げています。チェックテストや、自分で埋める表などもついていますから、やってみようと思う方の利用価値は大変高いと思います。

 エキサイティングな本ですから、訳本にしては結構読みやすくですし、エピソードなんかを見ていると元気も出てきます。

 さあ、なにかをやってみよう!でもその何かがわからない、とか、どう動けばよいかわからないとかいう方のお勧めの本です。

 


『あの巨大地震と大津波の中で、「何があったのか」』

 3連休初日ですね。やりたいことを今日はまとめて片づけようと思い、本を持って外出しました。

 持っていったのは門田隆将著「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日」

 福島第一原発に関する書籍は、報告書(このブログでも福島原発事故独立検証委員会著「福島原発事故独立検証委員会 調査・検証報告書」を取り上げました。)や、新聞記者によるノンフィクションものが多数出ていますが、少し時が経って、じっくりと取材し、登場人物の思考、判断、歴史なども掘り下げたものノンフィクションがこれから、徐々に出ていくのだろうなと思います。

 
 門田隆将氏は遺された犯罪被害者の立場を掘り下げた「なぜ君は絶望と闘えたのか―本村洋の3300日」や、戦争もの(このブログでは「この命、義に捧ぐ」を取り上げました。)など、優れた作品を連発しているノンフィクションライター。その門田氏が、事故当時福島第一原発所長だった吉田昌郎さんと一緒に働いた職員、関連会社、そしてこの危機の中飛び込んでいった自衛隊員などのインタビューを通じて、あの原発で「何があったのか」のかを、事実を積み重ねることにより掘り下げた作品。


 

この作品で描かせてもらったのは、原発事故の「悲劇の実態」と共に、最悪の事態に放り込まれた時に日本人が発揮する土壇場の「底力と信念」だったかもしれない。(p374)

 行き帰りの電車や献血しながらも読んでいたのですが、皆さんがこの事故に立ち向かった姿に、正直何度もこみあげてくるものが合って、抑えるのに必死でした。

 吉田前所長は現在闘病中とのこと。吉田氏の早いご回復と、福島の少しでも早い復興をお祈りしたいと思います。





「プレッシャーは克服してはいけない」

 正月休みもいよいよおしまいですね。先ほど、日テレの「もうひとつの箱根駅伝」を見ていましたが、2日間のレースにかけるそれぞれの思いが凝縮した1時間番組でした。日テレの箱根取材は、夏合宿、主要な記録会、出雲や伊勢に走れなかった選手を合宿所まで追う等、ほかのスポーツでは考えられないほどの取材体制を取って、それを中継にぶつけているというのがこういう番組を見ていると良くわかります。視聴率の高さは、この取材の充実度にも支えられていますよね。

 さて、ウィンタースポーツだけでなく、受験等でもここから勝負の1月です。受験生の方、受験生を持つ親御さんにとっても緊張感が増す月ですね。


 前回のブログでプレッシャーに弱い人がどうやって仕事を進めていけばよいのか。というテーマを取り上げてみたら、反響が大きかったので私がかつて読んだ本の中で引き続きこのテーマを取り上げた本のご紹介をしてみます。

 昨年中日の投手コーチを務め、吉見投手の起用法をめぐり監督との対立なんていう話題もあった権藤博さんが、就任以前の2010年に書いた新書「教えない教え」 (集英社新書)


 権藤さんといえば、中日のピッチャーとして現役時代連投に次ぐ連投で、新人だった昭和36年に35勝、翌年も30勝を上げるなど2年間で130試合!に登板。その登板ぶりは「権藤、権藤、雨、権藤」と流行語になったほどでした。しかし、3年目10勝、4年目6勝、その後は勝てずに現役を引退しています。

野球解説を数年された後、中日・近鉄ダイエーでコーチを。そして、横浜ベイスターズでは監督もされて、チームを日本一に導いています。(リリーフエース・大魔神こと佐々木主浩投手がいた時代です。)

 「教えない教え」 (集英社新書)は、それらの経験を活かして選手の個性を伸ばす権藤さんの「コーチング手法」について、大変わかりやすく書いています。コーチとしてどう監督に向きあうかの話も載っていますので、特に27ページあたりの話を読んで見ると去年ドラゴンズのベンチの裏でどんなやりとりがあったのか、想像できるのではないでしょうか。

 さて、本題、プレッシャーのかかる場面でどうすればよいのかという話に戻りましょう。

 pp77−79の「プレッシャーは克服してはいけない」で権藤さんはこう書いています。

緊張やプレッシャーを克服するにはまず、「人はなぜ緊張するのか?」というところから考えなければならないだろう。

 勝負事における緊張は、相手からではなく、自分の中から派生しているということをまず自覚すべきだ。プレッシャーのかかる場面において、「うまくやらなくてはならない」、「成功しなければいけない」という考え方に囚われてしまうから緊張するのである。
 現代社会は「結果がすべて」という考え方に支配されてしまっている。そんな社会の風潮も人が緊張する度合いを深めているような気がする。
 「失敗は絶対に許されない」。そんな考え方に囚われてしまったら緊張するのは当たり前だ。思考も体も柔軟性を欠いた状態では、普段の実力の半分も発揮できないに決まっている。
 すぐに緊張してしまうタイプの人は、緊張を「克服しよう」と考えず、少しでも「軽減させよう」という考え方にシフトチェンジしてみてはどうだろう。
 それにはまず、プレッシャーのかかる場面から逃げてはいけない。緊張するような場面にいられることに感謝し、「こんな重要な局面に立ち会えるのだから最高じゃないか」と気持ちを切り替えるのだ。
 そうすれば、「よし、じゃあ自分がどこまでできるか試してみよう」と前向きな気持ちにもなれる。
 プレッシャーと正面から向き合い、「上手くやろう」とか「失敗は許されない」といった考え方は捨てる。失敗したっていいや。失敗したからって死にやしない」と開き直るのも、ひとつの方法と言えよう。(pp77-78)

 

 試験に限らず、何かのプレゼン・発表とか、就職の面接など、難関突破を図ろうと頑張っている人が、ぜひプレッシャーをうまく「軽減して」、普段の力を出すことができるよう、お祈りしています。












「なぜ、本番でしくじるのか」

あけましておめでとうございます。

こちらのブログの更新が遅れていて、気にかかってはいたのですが、これからもこんな感じで読み終えたら書くという感じでゆるゆるとやっていきますので、もしお付き合い頂ける方は、こちらもご覧いただければ幸いです。


さて、年末にかけていろいろとやっていたことがあります。仕事もしたし(仕事納めの日とおおみそかに動いた物件もあったりして・・・)、家事も(少しは)やったし、人にもあったし、とやっていたらあっという間に年を越していました。そんなあれこれのうち、クリスマス時期に急遽勃発したお仕事がらみで、調べたいことがでてきました。

どうして簡単なことでも緊張するとできなくなるのか。プレッシャーに弱い人がどうやって大切な仕事を乗り切っていけばよいのか。そういうヒントがないかな・・・

年末に少し本棚を整理してみたら、積読していた中にありました。それがシアン・バイロック著(心理学者)、東郷えりか訳「なぜ本番でしくじるのか」---プレッシャーに強い人と弱い人

 この本、原題は「Choke」といいます。この「Choke」の意味は「息がつまる、配管がつまる」ことから転じて、「プレッシャーを感じて本来の力を発揮できない」ということ。この克服方法をきっかけだけでもわかればラッキーかなと思いつつ、300ページを越える本を、高校サッカーニューイヤー駅伝も、天皇杯も気になる中、読み進めました。

今日はどうして緊張すると力が発揮できないのかとその解決法の一端をごく簡単に。

不安や自信喪失で頭の中がいっぱいになると脳にとって−および本人にとって−きちんと機能することが難しくなる。(p152)

普段の業務を処理するための頭の機能を不安の処理に使ってしまい、集中力もなくなってしまう状況では、実力のほとんどを発揮できずに終わってしまう。これは本人がそう思っていなくても、周りの人があいつはダメとか苦手意識を持っているだろうと思いながら接しているだけで本人が影響されて、悪い方向に持って行ってしまうかもしれないというやっかいな問題なのです。

じゃ、どうすればいいのか。

「徹底的に向き合い克服する。」「慣れる。プレッシャーがかかる状況での練習を繰り返す。」「感情を表すことで、状況を客観視する。」「やり方を変える」「考えないでとにかくやる」「どうやってやるかを考えすぎずに、やることに集中する」「瞑想する。気持ちを整える。」など、さまざまなケースにおける解決策が掲げられています。

今回のケースは社会人になってまだ日が浅い方を如何に育てて、社会に貢献できる人材として活躍してもらえるようになるかというご依頼ですが、それに限らず「想いをサポートする」ため、今年も一緒に解決方法をじっくり考えていきたいと思います。










お知らせです。

昨日をもって、当サイトでのtwitterまとめは終了しました。

もし、twitterをやっていない等の理由でブログ経由で私のtwitter発言をまとめてご覧になりたいという(本当にありがたい)方がいらっしゃいましたら、アメブロをご覧いただければ幸いです。

尚、引き続き読書日記はこちらにポストします。かなり間は空いてしまうと思いますが、ご容赦ください。

2012年11月29日のツイート